起立性調節障害についての概要を知りたい方へ
概要、原因、対策、関連事項
起立性調節障害とは 概要と原因
自律神経の働きが悪くなり、起立時に身体や脳への血流が低下する病気(症状)です
- 朝になかなか起きることが出来ない
- 食欲不振
- 全身の倦怠感
- 立っていると気分が悪くなる
- 頭痛
などの症状が起こります
症状は午前中に強く、午後からは体調が回復することが多いです
夜には元気になり、逆に目がさえて眠れないこともあります
その他の特徴として
- 腹痛
- 乗り物酔い
- 不眠
- 判断力・集中力の低下 など
一般的に小学校高学年から増え始め中学校、高校生と急増し大人になるにつれて症状は徐々に和らぐ傾向があり
子どもの頃に起立性調節障害(OD)を発症した人のおよそ4割が大人になって起立性調節障害を再発しているという調査結果もあります
自律神経失調症やうつ病のような症状も見られます
思春期の子どもに多く、男の子よりも女の子の方が発症しやすい傾向にあります
大人の起立性調節障害の症状はというと子どもとほとんど変わらず
- 朝に起きることができない
- 起き上がると立ちくらみがする
- 午前中に調子が悪く仕事に行きづらい
というのが主な症状です
その他には自律神経失調症のような
- 不眠や倦怠感
- 食欲不振
- 集中力の低下
- 頭痛
- 動悸
などの症状もみられます
原因
起立性調節障害(OD)の場合は自律神経の乱れによって
血圧が上昇せずに、脳や上半身に血液が足りない状態になり
酸素や栄養素がうまく体中に行き渡らないため
疲れやすかったり、だるくなったり、疲労が回復しにくくなったり
脳に血液がいかないことから思考力や判断力も低下していきます
また、体の動きに血液の動きがついていけないためにちょっとした運動で動悸がしたりします
そのため起立性調節障害(OD)を持つ方は運動を嫌い、家で横になることが多く
こういった生活が続くと症状が悪化し、不登校や引きこもりにつながる恐れがあります
起立性調節障害の分類
起立直後性低血圧(INOH:アイノー)
起立した直後に強い血圧低下が見られ、回復に時間がかかる
起立した直後に強い立ちくらみや眼前暗黒感、全身倦怠感が見られるのが特徴
軽症型と重症型があり、血圧の低下具合でどちらかに判断されます
起立性調節障害で一番多いタイプがこの起立直後性低血圧タイプです
体位性頻脈症候群(POTS:ポッツ)
起立して数分たった後に血圧の低下が見られ、全身倦怠感や頭痛、ふらつきなどがでるタイプ
起立直後性低血圧の次に多く見られるタイプです
神経調節性失神(NMS)または血管迷走神経性失神(VVS)
起立直後には特に大きな血圧低下は見られませんが、起立してしばらくすると突然急激な血圧低下が見られ、顔色が悪くなったり、失神してしまったり、立っていられないほどの立ちくらみといった強い症状が現れるタイプです
遷延性(せんえんせい)起立性低血(delayed OH)
遷延性(せんえんせい)起立性低血圧は、起立後は目立った血圧低下はありませんが、徐々に血圧が低下し3〜10分後に症状が見られるタイプです
過剰反応型と脳血流低下型
4つのタイプの他に
近年新しい2つのタイプ(過剰反応型と脳血流低下型)があることが分かっており
それらは起立性調節障害の方全体の15%程度にあたると言われています
過剰反応型は、起立直後に血圧が上昇してしまうタイプ
脳血流低下型は、起立後の血圧や脈拍には異常が見られないが、脳血流のみが低下しているタイプです
対策
起立性調節障害を改善するためには
乱れてしまった自律神経を整える治療に加え、自律神経を乱す原因を改善することが大切です
自律神経を乱す原因を改善することで自律神経に間接的にアプローチし、乱れてしまった自律神経を徐々に整えていくという方法が一般的な対処法として行われます
自律神経を乱す原因としては主に次のようなものが挙げられます
• 不規則な生活
• ストレス
• 水分不足
• 運動不足
原因を一つずつ改善していくことで
自律神経が乱れにくい生活を送ることが乱れてしまった自律神経を徐々に改善させていくことにつながっていきます
※非薬物治療では改善しない場合には投薬治療を行う場合もあります
具体的には
カフェインに注意
「コーヒー、紅茶、お茶、栄養ドリンク、コーラ、チョコレート」をなるべく摂らない
カフェインを摂ると交感神経が過剰に働いてしまうことによって、副交感神経優位の回復する時間が少なくなってしまい疲労感が無くならない
パソコンや携帯電話は使用を控える
同じ姿勢をとり続けたり目を酷使したりするパソコンやスマホなどは、連続的に使用すると全身への血流低下や脳への負担となる
意識的に休養を取る
体を意識的に休めることによって副交感神経が働き交感神経優位の状態から自律神経全体のバランスをとります
入浴はぬるめのお湯にする
就寝前の入浴は副交感神経活動を高めるために、ぬるめのお湯に入り体が冷えないうちに就寝する
関連症状
症状などに共通点があることからうつ病と間違われてしまうこともありますが
うつ病の薬を服用すると起立性調節障害(OD)の症状を悪化させてしまう可能性があることに注意が必要です
起立性調節障害とうつ病にはいくつかの共通点がありますが次のような違いがあります
起立性調節障害(OD)とうつ病の症状の違い
起立性調節障害(OD)
立ちくらみ、朝起きられない、気分不良、立っていると気分が悪くなる、失神(または失神のような症状)、頭痛、全身倦怠感、不眠、食欲不振、集中力・判断力の低下、イライラ、動悸、車酔いなど
一日中症状が続くことはなく、夕方から夜にかけて回復する
うつ病
不眠、睡眠過多、イライラ、集中力減退、罪悪感、無力感、無価値感、気分の落ち込み、気力減退など。
「起床時に体調が悪い」あるいは「夕方や夜に症状が回復する」とは限らない
起立性調節障害の症状は1日中続かないのが特徴で
午前中に症状が現れ、昼、夕方、夜と時間が経つにつれて回復していく傾向が強く
一方でうつ病は時間帯による症状の変化はなく、一日中症状が続きます
※定型うつの症状に限ります
自律神経失調症とは
不規則な生活習慣やストレスなどにより、自律神経のバランスが乱れるために起こる、様々な身体の不調のことで、はっきりした内臓や器官の病変によるものではないため症状の現れ方もとても不安定です
※「自律神経失調症」というのは公式な病名ではありません
身体の一部が痛む、精神的に落ち込むなどの症状が現れますが
複数の症状が重なって現れたり、症状が出たり消えたりすることもあります
治療は心身両面から行う必要があります。
自律神経失調症もうつ病発症の原因となるのはストレスとされており
起立性調節障害や自律神経失調症が悪化することでうつ病に移行する可能性もあります
最後に
起立性調節障害、自律神経失調症あるいはうつ病の場合であっても正確な鑑定と適切な治療を行うことが重要です
原因はストレスとされており、症状が似ていて かつ併発する可能性がありますが
起立性調節障害と自律神経失調症については自律神経の乱れによる症状で
うつ病については脳の機能低下による病気とされています
これらの症状の改善は数ヶ月〜数年かかると考えられており、時間をかけて治療していくのが再発を予防する上でも重要です
「時間を無駄にしてしまっている」と焦るかもしれませんが
何が原因でどうして症状が出るのか
を知りながら少しずつ進んでいくのが良いと思います
また、ご家族の方についても症状についてご理解いただき、苦しんでいる当人のために現状をよく知ることを心がけていただけたらと思います